中小企業白書No15 8月22日(火)大安 曇り
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さて、中小企業白書について、引き続き見ていきます。
第2部<テーマ分析[1]>東アジア経済との関係深化と中小企業の経営環境変化の「第2章 中小企業の国際展開の現状と課題」の第4節です。
第4節 国際展開・国際分業による経済的効果
1.海外市場へのアクセスによる販路の拡大と国内取引への波及効果
企業にとっての国際展開はどのような経済的効果を企業自身にもたらすであろうか。まず、海外生産拠点を持つことで、海外市場の開拓が可能になるのはもちろんのこと、日本本社の売上増につながることがある。海外展開したことそのものによって、企業の知名度が上がり、例えばこれから同じ地域に進出を考えている企業からのアクセスが増えたり、自ら営業活動を行う際にも、海外生産ネットワークが大きなセールスポイントとなったりして、国内で新規顧客が増えるのである。また、海外拠点で新たな取引先を開拓し、それが日本国内の取引にも波及することもある。詳細については、後述する「第5節 東アジアにおける取引環境」において解説をすることとする。
2.国内事業と海外事業の関係
(1)日本本社と海外拠点の機能分担による効率化
企業は国内と海外拠点の機能分担を図ることで経営の効率化を志向する。中小製造業がアジアに展開している拠点の製造形態は、日本との工程間分業は2割程度、現地で一貫生産を行っている割合が7割を超えている。中には事例2-2-4のように、大規模な一貫生産体制を構築し、短納期・高品質の大量生産を実現している例もある。
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事例2-2-4 一貫生産体制の構築により短納期・高品質の大量生産を実現
内野(株)(本社 東京都・従業員 628名・資本金 2億4,000万円)はタオルの卸売業から始まり、現在はタオル以外にもバスローブやマットなど幅広くバス関連商品を手がけている。同社はもともと自社で企画を立て、それを国内のメーカーに製造委託し、販売するという形態の卸売業だったため、生産に関するノウハウは全く無かった。
1985年のプラザ合意以降、円高基調が続くと予測し、海外から価格競争力のある製品が輸入されてくるという懸念を抱き、製造委託をしていた各地のタオル産地の人たちに海外生産拠点作りについて検討を依頼した。しかし委託先からの賛同を得るには時期尚早の時代であった。そのため、独自に海外へ出て行くことを決心し、1988年、もともとタイにあったタオル工場に資本と技術を入れ、同社がマネジメントを行う形で、タイに最初の合弁企業を立ち上げた。その後、生産ノウハウと海外での経営ノウハウを蓄積し、独自の工場を求め、1993年、中国・上海に72,000m2の自社工場を設立した。現在、現地法人は従業員1,900人を抱える日本本社100%出資の独資企業である。日本向け生産が9割であるが、1997年からは中国国内販売も始めている。
およそ12の工程にまたがるタオル生産を一貫生産でやっている企業は日本にはないが、上海工場では、日本で作られているものと同等以上の商品を海外で作るという発想から、最新の生産設備を擁し、高付加価値商品の生産を紡績から最終品に仕上げるまでの一貫生産にて行っている。一貫生産体制のメリットは、品質・納期に信用のおける外注先が少ない中で、品質・納期管理を自社で行えること、様々な間接経費を削減しコスト競争力も併せ持つことができることにある。
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現地の技術水準については、5割強が日本とほぼ同等、4割強が日本より低いと回答している。つまり、国内生産ではコストが見合わなくなった単純な組立工程、あるいは付加価値の低い汎用品や大量生産品を人件費の安いアジアへ移管し、国内の設備や人員は、より付加価値の高い製品や、多品種少ロット品の生産、研究・開発部門へとシフトすることで全社的な事業効率を高めることが可能になる。
また、異なる地域にまたがって複数の海外拠点を有する企業の中には、事例2-2-5のように、拠点間の技術格差等に基づいて、機能分担をしていたり、地域リスクを分散させたりしているところも多い。
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事例2-2-5 中国・ASEAN拠点で機能分担・リスク分散している事例
光学機器、医療機器メーカーの日本精密測器(株)(本社 群馬県・従業員 150名・資本金 2億6,800万円)では、30年位前、台湾に日本本社が50%出資する合弁会社を設立したのが海外進出の始まりである(現在、この台湾日精は、事実上別会社になっている)。その後、1997年インドネシア、1998年中国・蘇州に現地法人を設立した。製造製品はデジタル・アナログ血圧計であるが、デジタル血圧計は3分の2をインドネシア、3分の1を中国で生産し、アナログ血圧計は100%中国で生産している。血圧計以外の心電計、パルスオキシメーターなど、特殊で利幅も大きいが生産ロットが少ないものは、日本で生産している。台湾は既に経営権を渡しているので、メーターのうち日本本社で作っていないものを作っている。基本的には、多品種、少量で利幅が大きいものは日本で、大量生産品は中国とインドネシアで生産する分業体制が敷かれている。完成品は、日本の他、アメリカとヨーロッパ向けが多く、アメリカとドイツには営業拠点も置いている。
同社の東アジア進出目的はコストダウンであるので、中国で調達する部品や材料は、ほぼすべてローカル企業や台湾系企業を調達先にしてコスト削減効果を上げている。デジタル血圧計の部品のうち、重要な物は中国で作ってインドネシアへ輸出するなど、拠点間の連携をしている。トータルで見ると、インドネシアより中国の方がコストが安くなっているが、中国で何かあった時のリスクをカバーする意味でもインドネシアの拠点を維持している。
中国におけるワーカーの離職率は高く、労務管理が難しいので、彼らをマネジメントする上では、優秀な中国人とサポート役としての台湾・香港・韓国系の人材が有益だと感じている。インドネシアにおける人材面の問題としては、中国のような転職や独立を考える従業員は少ないものの、中間管理職に適するような人材の蓄積が進まないという面がある。
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(2)国内事業と海外事業の相乗効果
海外展開した中小企業において、海外事業は国内事業にどのような影響を与えているのであろうか。中小製造業における国内生産と海外生産の関係を見ると、海外現地法人を有する中小製造業は、海外進出した場合において、「国内生産活動に変化なし」が約45%、「国内は高付加価値分野にシフト」が約25%であり、その他「人員の再配置」も含めると、8割近い企業は海外展開をしながら国内生産も効率的に維持し、生産性の向上を実現する、いわばWin-Win型の企業であることがわかる(事例2-2-6参照)。
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事例2-2-6 海外展開は国内事業を含めた全社的利益に貢献
携帯電話の部品等の精密プラスチック金型製作・金属部品との一体成形加工を得意とする(株)明王化成(本社 東京都・従業員 80名・資本金 3,000万円)は、中国市場の拡大を見越して2002年上海に資本金300万ドルを投資して進出した。同社の主たる業務は金型を用いた成形加工であるが、自社で金型インサート成形機も作っている。金型製作の部分はアウトソーシングしており、コア技術は、金型設計とその金型の組込から試作評価を行う能力である。
金型の現地調達が難しいと言われる中国においても、同社は地道な外注先の発掘に尽力し、「顧客の図面から金型を設計→部品ごとの図面を設計→ローカルの金型メーカーへ外注→工場納品→組立て→部品製造または金型販売」という流れを築いており、金型製作の外注化に成功している。外注先として5社の確保に成功しており、今では日本で受注した金型製作も全て上海で製造しているが、品質は日本の外注先と同等か、それ以上のレベルであると感じている。
同社の経験では、海外進出は決して国内事業の縮小ではなく、海外進出が国内事業の成長にも通じる、まさにWin-Winの関係になりうるものである。たとえば、中国に進出したことで、欧州企業との取引が現地で開拓できた。これまでは、中国に技術が存在しないので、わざわざ日本まで技術を買いに来ていた欧米企業に対しても、日本と全く同じ技術・能力を中国で提供できれば大きなアドバンテージになる。中国事業立ち上げのために現地に派遣した3名の若手社員も働きぶりも素晴らしく、中国事業の成功は日本の社員にも刺激を与えることとなり、結果として日本工場の生産効率も向上しつつある。
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次に「企業活動基本調査」の個票データを活用し、海外進出が中小企業のパフォーマンスにどのような効果を持っているのかを分析する。1995年度に海外展開した中小製造業を対象にして、海外展開が国内部門の業績に与える影響を分析した。進出前年度(1994年度)の時点で、売上高経常利益比率(経常利益÷売上高)、企業規模、企業年齢、総資産に占める有形固定資産比率が全サンプルの中央値である仮想的な企業を考え、2002年度の売上高経常利益比率について、「海外進出した場合」と「海外進出しなかった場合」に分けて、それぞれシミュレーションを行った。その際、「海外進出するような企業は元から経営能力が高いために、海外進出の有無にかかわらずパフォーマンスが高く出る」という結果を招かないよう、純粋な海外進出の効果を測定するため推計方法に工夫を加えている。シミュレーションの結果、1995年度に海外進出した企業の7年後の売上高経常利益率は6.5%となった一方、海外展開を行わなかった企業のそれは1.9%に留まっていた。このことから、海外進出をした企業の方が国内部門の収益力向上にも大きな効果を生じていることが推定できよう。
アンケート調査においても、1990年代初めに東アジアに拠点展開をした中小企業について、海外展開をしていない企業と比較して日本本社業績への影響を見ると、進出当時、業績が停滞・悪化傾向であった企業も日本本社の売上高や本社営業利益率の好転につながっている割合が多いことが分かり、経営上プラスの効果があったことがうかがえる。
こうした一連の結果は、海外展開による事業の最適配置の実現や、本社と海外拠点の機能分担体制が全社的効率性の向上に寄与していること、また1.で述べたような顧客獲得が成功していることなどを示唆している。
このように、国際展開は国内事業を洗練して付加価値の高い領域へとシフトさせ、結果的には我が国製造業の全要素生産性の向上に資するという役割も果たしている。
3.企業経営上の人材育成効果
中小企業の国際展開は人材育成にもメリットをもたらすことが多い。海外現地法人を持つことで社員の国際化に対する意識が高まるほか、現地へ派遣された社員は、様々な苦労に直面する中で、グローバリゼーションを肌で感じたり、日本では経験が難しいような多数の部下を指揮・監督したりすることで、将来の幹部候補としてキャリア形成上プラスになることも多い。特に、中小企業では経営者の子息などの後継者候補をあえて現地法人の責任者として出すことで、国際ビジネスに精通した後継経営者の育成・確保へとつなげられるメリットがある。海外進出するか否かにかかわらず、製造業はグローバリゼーションの中での競争が当然の状況となっており、後継者はもちろん、社員も含めて国際化に対する意識啓発を行っていくことは重要だと言える。
さてさて、今日は、「チンチン電車の日」だそうです。1903(明治36)年、東京電車鉄道が新橋~品川間の路面電車の営業を開始しました。この日が東京で初めてチンチン電車が走った日です。また、日本で最初の一般道路を走る路面電車が登場したのは、1895(明治28)年2月1日、京都でのことです。琵琶湖の水力で発電した電力で動かしていました。
今日も、最後まで、お読み頂きましてありがとうございました。
以上、わたくしの「ひとり言」でした。
明日もお楽しみに!
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